■2008/12/16(火)
 Vol.962
我が家でちょこっとお仕事、講談社から出る本のゲラをいじくってみる。
俺こんなこと思ったかなー。俺こんなこと言ったかなー。俺こんなこと書いてたかなー。
俺がタッチしてんだろうが、出来上がって来る作品は、何か何時も他人事、出版社や担当者がよければそれでいいや、が俺の性分。
しっくり行かず、中々ゲラも読み進まない。難しくってどうもいけねえ。ゲラを読む前に、出来上がったばかりの竹書房さんの、
「見えない道の歩き方」
に目を通す。
[写真:957b]
「悟らない」から始まって、俺だよな、俺らしいよな、とスーッと読めた。
多分この本は中学生程度の能力程度だから、俺にもピッタシはまる。こんな本じゃ、甲野善紀教授や、名越博士にゃいくら仲間意識があっても送ったら、馬鹿にされるが落ち、内緒にしとこと思っていたら、空気が読めない担当者の誠がすでに送ってしまったらしく、甲野教授から、
「読んだよ」
とお電話を頂く。この程度の本は俺程度が読めばいいことで、教授や博士に送っちゃ、図々しいって、その証拠に名越博士からはウンともスンとも返ってこない。
さすが正統派だよなー(笑)名越博士は毎日毎日、テレビに出演、今や夢を叶えたタレント先生、甲野先生も全国を飛び回って忙しい日々を送っていらっしゃる様子。
それに比べて、この俺を見てよ、今だにパラオでの遊んだことばかりを追っかけている。愚かだよなー。難しいことはお手上げだが、楽しい遊びなら喜んでが、子供の頃から今だ続行中。
パラオの旅も三日連続して海の上。海に入れば鮫。鮫に逢えるなら多少の危険も楽しみに変わる。
「会長皆んなタフですね」
と現地のインストラクターの優もお疲れ気味。
「帰ったらバタングーですよ」
外洋の海、潮の流れもきつい、道具も持たない、素潜り連中を引き連れて、誰もが恐がり嫌がるサメオンリーの一日。
優も海っ子だが体力を使い切り緊張も多かっただろう。優は大変な仕事を引き受けちまった分、俺達はそれ以上の楽しみや感動があった。
俺達もクタクタだったが、そこに鮫が出ると思ったら潜るだけ、今度だけ多分次はない、今だけ、今回だけが俺達をつなげてくれる。
鮫を追う旅も終わる。最後の一本をつながって潜る。一時間以上も泳いだり、潜ったり、温かい海と言っても水中は体力を知らぬ間に奪っていく。
「優行くぞ」「会長、やりますか」
俺と優で呼吸を合わして最後の気力を絞って、泳ぎを早め、あっという間に皆んなから距離を置く。我が仲間の人間くささから離れ、距離を置くと、海中20m近くを岩に擬した海亀の姿を発見。優が海面上、後ろから、俺は回り込んで深場に身を置き、海亀をこれ以上深場に逃すことを避ける。
俺も優も動きを早めるんだが、柔らかさと静かさだけは忘れず、海亀の動きに少しずつ合わせる。追っていた優がすーっと海中に降りる。その瞬間、潜る時のちょいと早さを感じとる。
こりゃ逃すなと思いつつ、深場から追い続ける優も、もう一息だったが、海亀がほど良い距離を取って岩場から漆黒の深場へ、息を全部使い切った優も俺も海面へ、俺の方が全ての力を出さなかった部分、余裕があった。その視界に、逃げた海亀と交差するように、一匹の海亀が、何と現れてくれる。
その海亀を一人追う。しっかりと追って、海中で海面からは岩と化した海亀の位置を定め置く。
「優」「優」と呼ぶ。その頃、優は伴に潜った、俺の姿が海面にないことに気付いて、後から来た者に、
「会長は、会長は」
と、俺の身を案じてくれていたらしい。強い潮に流されたり、深く潜って浮力を失って、海の藻屑になることもあるんだ。
俺をさがしに優が戻って来て互いの安全を確かめ合う。ならばもう一丁と、優が、俺が指差す岩の固まりに向かい、俺が今度は岩と化した海亀の頭の方から潜って行く。
海亀は自分の身が丁度隠れるほどの穴の中に、身を潜めていた。そーっと静かにキャッチ、俺がしっかり抱きしめて、海面にすーっと浮き上がる。
優も三年いて二度目の体験。それも優と雀鬼と協力した二人だけの成果に、目を大きく開いて感動している。もちろん俺も敗けずに大感激。
3日潜ってタイマイを二匹も、この手で抱けるなんて、最高の喜びである。
この感動を一同に分け与えるために、今度は誰の手にも渡さず、船の上にあげる。
[写真:962]
道場生等は一匹でも難しい海亀を、最終日の最後の潜りで又一匹に最高の喜びを味わってくれる。タイマイは海に住む一匹の海亀だが、俺にとっては孫を抱くのと同様な気持ちにさせる。
一人一人が記念写真を今度こそ撮れて大逆転。海面近くのデッキで亀くんに感激と感謝の礼をして、
「無事にな」
とそっと海の中に離してあげる。
[写真:962b]
俺の足元で1m近かった、海亀がすぐに10cmぐらいの黄色い花に変わり、又すぐに黄色い一点になって、海の深場に帰って行った。
優とキャプテンモーガンと、俺達のとてつもない遊びが終わる。心残りを感じてか帰船しなければならない時間になった頃、
「会長、あの島へ寄って行きますか」「行こう優、ありがとう」
最後のパラオの旅も待っていたのは、鮫つき温泉場。優も俺達もこの三日間の濃い時間を振り返って、自然に笑いが出る。
「会長、又来年」「次はねえよ、優」
老人と少年と鮫と海亀と仲間達。
[写真:962c][写真:962cc]
いい旅だった。次は出来ない日々だった。
船は二時間近く遅れて、ホテルの桟橋に着く。モーガンと優が乗った、楽しさをくれた船が、サンシャインに照らされて遠去かる。映画のワンシーン、ラストシーンを越えた現実感が今だ残っている。
雀鬼

[写真:962d]
三日間遊んだ、楽しませてくれた、優くん、モーガン船長との最後のお別れの時。まるで計ったかのように、夕日が沈んでいって、本当にきれいでした。
そして奇跡の二匹目の亀!!本当に助かりました。最終日、本当の最後の最後に会長があの亀をとって下さらなかったら、自分は今だにパラオの海で亀を求めて泳いでいるところでした。みんなが念願の海亀との記念写真を撮ってくれてホッとしました。それ以上に、こういう時の会長はマジで凄い、凄すぎると、会長の弟子で本当に良かったと思えました。会長、優くん、奇跡の亀ありがとうございました。
[写真:962e]
ラストも決まって、大団円のパラオ旅行。天気や海、自然にも、会長や優くん、人にも恵まれ、お留守番をして下さった方々全部、全てに感謝、感謝です。会長、皆様本当にありがとうございました。(ジーコ)
[写真:962f]
という訳で沢山の写真もありがとう!最後は、ちゃっぺさんのとんがり頭でラストです!(花岡)

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