■2008/12/12(金)
 Vol.960
「宇佐美、そろそろ暑いところへ行きてえよなー」
と、俺の一声を聞いて、 町田道場の理絵ちゃんと下北のしげるが動き出し、 予定を組んでくれた。
俺は東京では全く動かず、 何も分からない中、話しが決まっていく。 すぐにしげるのキャンセルの報が届く、残念!! 行動を伴にする者として、 鬼打ち猛者のチャッペが手を挙げ、 今までパラオ行きのチャンスをことごとく逃していた、 恒が入り、チャッペと恒と道場も棲家も一緒な小鉄が、
「キャンセル覚悟で申し込みます」
と乗って来た。 海外旅行が初めてのノックが加わり、 そこに四年間家出して、帰って来てから8ヶ月、 一日も休まず仕事場に現れているジーコも行くという。
ジーコときたら、頑固もんで、 道場生の心や行動の中に土足でズカズカ入って来ちゃ、 文句がある者は得意な格闘技で極めてしまう。 俺ですらその分野じゃジーコ殿に一目置いて、 逆らうことは避けている。
ジーコは完璧主義ですから、 ミスや誤りは許さねえ正義感を持ち、 センスの悪いもんは、 女、子供でも容赦しない。
この8名に、 いい年こいて、ビキニをはいた、 変なオジサンの神山が何故かいた。
[写真:960]
初日から大型クルーザーでの外海での鮫遊びに、 一行はAクラスの感動、感激を十分に感じ取っていた。
「恒、小鉄よ、やっぱりパラオって最高だろう」
と目で答えかける。 何時だって楽しい陽気な仲間達と一緒で、 その上で、ちょっとした海の冒険。 大海にポツンと浮く、 我々の船上は笑いであふれる。
皆んなの笑いでクルーザーまで笑って揺れていた。 今や我が仲間、 完全に息の合った、 少年の優も、仕事を離れて、 俺や道場生の中に溶け込んでくれている。
「優、こんな仕事していても、嫌な客も多いんだろう」
小さくうなずく、
「そうだよな、俺達みてえに、乗ったら鮫、 鮫オンリーなんていう危ない客は最悪だよなー」
「鮫恐いっス。 でも会長等と同船すると、普段やらないこと、 出来ないことの壁を、乗り越えられて最高ス」
俺は正直、優も道場生と同様に可愛いし、 仲間意識を感じている。 多分優もそうだろう。
「会長、最後の一本行きましょう」
「ヨーシ」
少々強めの潮の流れに乗って、 100mほどの、浅瀬の珊瑚礁の棚を、 右近くに見ながら切り立った海中の壁(ドロップオフ)の上を、 鮫を求めて泳いじゃ、例の凶器である、 ペットボトルをペコポコ、ボコべコさせながら、 鮫を引き寄せる。
正直こういうポイントはダイバー以外決して近付かない、 シュノーケリングの素潜り組では現地の人も行かせないし、 そんな危険地帯に自分から行きたいという観光客はいないらしい(笑) そこは雀鬼流、行っちゃうんです(笑)
全員が一列になったり、輪になったりしながら、 鮫の姿を追う。 一時間以上、皆んなと同行し、 先頭を進む。
俺が泳ぎを早めて、一同から離れる。 優と俺で静かに、柔らかく海中を眺め、 互いに距離間を測り、 呼吸を合わして、 目標点に向かってすーっと、 降りて行く。
海中で優が後ろへ、 俺が前方から、目標物を追う。 すみやかにソーッと、 目標物をキャッチして、 海面へ向かう。
その瞬間は時も忘れ、呼吸も忘れ、 亀の重たさも忘れるほどの感動が起きている。 それは生物としての本能を忘れ去らしてしまったもの。 その瞬間、人としての感覚の向こう側の壁を越えた、 本能に少しだけ近づけた感覚が感動を生む。
「会長やりましたね」 「優、これ以上の感動をありがとう」
と互いに心の中で答え合いながら、 海中で微笑む。
[写真:960a]
海面に上がった頃、 一同がナンダ、ナンダと集まって来る。 海亀をしっかりも、やさしく、いとおしく抱く俺を、 一同が唖然と感嘆の顔で取り囲む。 海亀は運が良ければ、 時折り泳ぐ姿を見受けられるが、 まさか抱いているとは。
その感動を与えるために、 「誰か、抱きたいか、、、、」 「無理ス」、、、、静止、 自分がとジーコが。 逃がさぬように、上手にジーコに手渡す。 先にボートに上がった優が、
「皆んなで記念撮影を撮りましょう」
やったぁーと歓声の喜びがあがる。
「ジーコ、しっかり持ってろよ」
とそばで声を掛ける。
瞬間、 皆んなの夢や希望が瞬間に消えて行く。 ジーコの10m先海中を海亀の姿が消えて行く。 一同、久しシーン。
何だったんだろう、 今のは夢か幻か、
パラオの海っ子の優ですら、 三年いて、二度目の体験が一瞬の内に、 ジーコの手から離れていく。
[写真:960c]
「あーあ」
初日の海は最後にきて、 一同の心を海底に、、、、、
雀鬼

[写真:960b]
会長、皆さん、あの時は亀を逃がしてしまって、 すいませんでした。(土下座)
ほんのちょっと力を抜いたら、 あっという間でした。 亀と一緒に皆んなの楽しみや、喜び、大切なものも、 自分の手から離れていってしまいました。 あれ以来自分は浦島太郎と皆に呼ばれています(命名優くん) 時間よ、亀よ、お願いだから戻って来て下さい。 (ジーコ)

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