■2006/04/09(日)
≪ Vol.92
今日は後楽園ホールに、大好きなプライドを見に行く。…って、そんな訳はない。今やプライドは大人気ですから、後楽園ホールの箱では小さ過ぎる。本当はボクシングだってさぁ。俺行くの?行かなければダメなの?てぇ感じ。
ボクシングといえば、俺ん中では白井義男さんの時代だし、モハメッド・アリの世界ヘビー級クラスなら見てえよと思うぐらい、長い長い時の間があった。
今さら、今頃ボクシングかよ。それも、タイトル戦でもなければ、聞いたこともない、悪いけんど、無名の選手が出るらしい。気が乗らねぇせいか、試合日もよーく確認しないでさぁ。昨日、仕方がねぇから行ってみるかと家を出て、念のため、安田に電話を入れる。
「今からそっちへ出掛けるけど、何時からなの?」
「会長、今日は町田道場の方で雀鬼会のミーティングです」
と返って来た。やる気のない、行く気のない俺でしてねぇ、全く!!
そんな気の抜けた俺でしたが、ホールの入口で木津くんが待っていて、今、これから試合をする子も先生のファンだからと、会場裏に行く。
その子は俺の顔を見たとたん、試合前だっていうのに、ボクサーから、一人のファンに変心状態になって、素直な喜びを見せてくれる。どこを取っても、格闘家の臭いを放さず、その小っこい可愛らしい姿が、道場生の志村とダブる。元気で明るく、楽しい若者に出逢えたことで、この日、気の乗らなかった俺の心が、さぁーと変り、試合を見る前から気分が良くなってしまった。
志村似の立木選手の試合が始まる。今、初めて逢ったばかりなのに、気持が重なって、リングサイドからバンバン声を掛ける。プライドでも、ほとんど声を出さずにじっと観戦する俺が、まるで、子供の運動会で応援をする親父の姿に変ってしまう。
いいぞいいぞ、右打ってから左を打て、とか、知らず知らずの内にでっかい声を出しっ放しの自分に気づき、隣でだまって見ている安田に、
「俺うるさい?」
「いや、いいんじゃないですか」
その上、セコンドに着いている木津大トレーナー先生様さんを呼んじゃって、
「3cmほどずらして打たせろ」
などと能書きたれる。まるでどうしようもない酔っ払い親父振り。
先生が来て下さったから今日は勝ちですと、試合前に嬉しそうに言った通り、立木選手は文句ない闘い振りを見せて勝つ。立木くんの勝ちが志村の勝利のように感じ、俺の気分も元気も、絶好調。数分前に、初めて逢った顔の少年に、身内のような喜びと元気を頂くって、不思議だよなー。
木津君が俺の気分を良くしてくれるのは、今まで通りだから分かる。そのなぞはすぐ解けた。答えは、花形会長の作り出す環境に共鳴し、
「素直と勇気」
が重なる。
メインは、俺が嫌々ながら行ったはずの、木村章司選手が、元世界チャンピオンとやる。
試合に勝ち終えて帰って来た立木くんは、新聞配達か、ラーメンの出前に行って帰って来たような顔をしている。木村くんも、俺との初対面に、マジ嬉しそう。花形ジムには、嘘っぽい臭いを感じない。木津くんや安田が好きになるわけよ。俺だって、試合を見る前から好きになってしまったんだから。
鏡の前でシャドウボクシングをする木村選手の姿に、美しさを感じる。
「先生、俺、今日もう勝ちましたから、リングの上からお顔を拝見させて頂きます」
気負い・過信でない、彼の素直な実感の言葉を受ける。
[写真:092]
闘いが始まる。さすが相手は元世界チャンピオン。俺の目からみても、「弱場」がほんのわずかに見える程度だったが、一歩も下がることなく、木村選手も勝って試合を終える。
立木くんは、自分が試合で勝ったことより、俺が試合を見に来てくれたことの方が嬉しいっす、てぇ顔をしていたが、木村選手の勝利には、伴に苦労を費やした木津くんが大喜びしていることが、俺の喜びを倍加させる。何事もなかったよという顔で、そばで後片づけしていなさる、花形会長も、美しい。
小さい会場、名もない選手(失礼)であったが、俺にとっては、この日の出逢いに、元気と温かさを頂いた。
木村章司選手、立木くん、本当ありがとうねぇ。
花形会長、突然おじゃましまして、ご無礼の断をお許し下さい。
木津、良かったな。彼等と伴に作った、本物の「素直と勇気」のエネルギーを持って、明日から又弱った人を助け回って行って下さいね。
押忍。雀鬼
[写真:092a]
(前列)立木選手、花形会長、木村章司選手、(後列)松井選手、木津さん、桜井会長、小路選手
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