■2008/09/17(水)
 Vol.885
俺は彼を「旅の友」と思っているんだが、 奴の正体はどうも「地酒」にあるらしい。
彼とは二人して海外の海や、 日本の自然の中の湯を求めて、 一年に何回か旅をする。
俺は旅に、 川や海や山や森があればいいんだが、 奴は行きの車中から酒、 昼も夜もずーっと酒、 酒とは大人がたしなむ楽しみらしいが、 俺っちお子様には酒はどうもいけねぇ。 午後の紅茶と濃いお茶があればそれでいい。
湯宿で出る食前酒は、 料理を旨み増しということで、口に付ける。 飲ませ上手の彼がその手に乗せようとしてみても、 その手に25年かかっても、乗っちゃいない(笑)
「雀鬼」と「酒」 合いそうで合わない(笑)
彼とは今や竹書房で出世なさった宇佐美殿。 毎日酒を飲んじゃ、 身体をこわしている。 ためしに酒と俺と、どっちが好きなのよと問う。
「会長です」
と答えるが、信じるわけにゃいくまい(笑)
奴は食卓にトックリを何本も並べている。 奴が楽しいならその楽しみにちょっとだけ付き合ってやる。
「やっぱり合わない」
食事を中途にして酔った俺は外に出る。 庭のベンチに座ると、 池越しの山合いの天辺の雪間におぼろげながら、 中秋の名月が見える。 名月もはっきり見えるよりも、雲の流れの合間に墨絵のように、うすらぼんやり明かりを灯す方が風情がある。
「今宵の月は、、、、、」
なんて、ひたっていると、 俺と山合いの間の池の上を、 大きな白い鳥がすーっと飛んでくれる。 月と雁以上の光景を一羽の白鷺が見せてくれる。
「いい絵だ、、、」
どんな芸術作品より秀でる自然が作ってくれる光景。
庭には俺一人、鈴虫が鳴いている。 鷺が気を利かしてくれて、俺の前の杉の木の庭に止まってくれる。 酔ったはずの俺が正気に戻っている。 部屋で酒を抱く宇佐美だが、呼んでやる。
酒はもとより料理や湯よりも、 うまいもんを味わして頂いた。
雀鬼

[写真:885]
宇佐美さ〜ん。飲んでばっかいないで、写真撮ってきてくださいよ〜。と、いう訳で今年の夏の2ショットです。

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