■2008/08/16(金)
 Vol.850
「誰か自転車を貸してよ。」
道場生は、又会長の冗談が始まったぐらいの感じ(笑)
「歌田、鍵」
冗談に乗っかって歌田さんが鍵を差し出す。
「ちょっと行ってくらあ」
と本当に夜10時に外に出る。
俺の身体の痛みは皆んなも知っているが、 俺がどこへ行くかなんて全く知らない。 普段乗りもしない自転車に俺がまたがると、 ついて来た歌田とジーコさんが、 その御身体じゃ危ないです、と止めにかかる。
「平気平気、左足一丁でちょっくら行って来るから。」
追ってくる二人を追い返して、 通り道にあった治療院に向かっちまう。 治るとは思わないが試しに行ってみる。 痛みは未だ取れない。 右足の太ももの筋を伸ばしちゃった。 そういえば奥歯も一本欠けて落っこっちゃった。
自分の身体も痛がっていたが、 そんな時一通の手紙に目を通す。 親子からの手紙だった。 息子の方は短文で幼い文が数行書かれていたが、 奥に深い心の病いを感じる。 母親は達筆な文章がしっかりと書き出されている。
何かを感じて電話を入れてみる。 色々あって、三年も一歩も家から出ていないらしい。 動くと頭がビシッと痛むともいう。 「だよねえ」「そうだよね」と話しを合わしてあげる。
そこそこ思い通り上手くいっていたことと 思っていたら、大概の者は何かの壁にぶち当たる。 それを思春期ということが多いんだが、 多分この若者はそれが遅れて、 30才ぐらいの時に多分恋をして、 生まれて初めての大きな挫折感を味わった。
自分の気持ちも伝わらず、 相手の女性も思い通りいかないことで、 全てを否定した中に己からを置いてしまう。 恋や女性に対する初心者マーク者が、 起こしやすい事故である。
「愛こそ全て、愛があればどうともなる。」
そうだろうか?
愛とは中々うまくいかないもの。 男女の愛、親子の愛、 互いにあって求め合ったとしても、 困難がつきまとう。
現にその若者も、男女の愛で我を見失い、 母と息子で現状を何年も苦しんでいる。
「愛って難しいんだよ。 俺だって上手くいってないんだよ(笑)」
「ところでさぁ、一歩だけでもいいから 外へ出てみない?」
「・・・・・・。」
「コンビニでもいいからさぁ、 パソコンとゲームを終えて一歩だけ外へ出よう。」
「・・・・・・、ハイ。」
「これって一つのチャンスかも知んないよ。」
「そうですよねぇ、桜井さんと お話し出来たんですから・・・・。」
雀鬼

[写真:850]
みんなが幸せになれますように(花岡)

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