■2006/03/27(月)
 Vol.80
その男は、麻雀はさほど好きでもなかった。その男は、雀鬼会の中でも、麻雀はそれほど強くもなかった。その男は、日々にそれほどのゆとりや暇がある訳でもなかった。道場経験が長いわりには(13年)、麻雀における技術も力量もさほど伸びず、
「どうよ?」
とたずねれば、
「自信はありません」
と答えが返って来るであろう。それでも頑張っていれば、何時かは「花が咲く」とは本人も周りも思っていなかった。
雀鬼会も雀鬼流という思考も行動も、「牌の音」という麻雀道場も、俺一人がいただけじゃ何も始まらない。道場を護ってくれる道場生があってこそ、今までやって来れた。
雀鬼会では一週間で100回麻雀を打つことを「鬼打ち」という。「鬼打ち」と呼ばれるだけにそれを達成することは、時間的にもけっこう厳しい。たまに、一回だけでも「鬼打ち」に挑戦した者は、苦しかったと言う。
その男は、その厳しさを、二年半にわたる本戦五期の期間を、83週連続の凄まじい鬼打ち記録を残して「終った!!」。寝ることや、自分の時間を犠牲にし、健康も管理しながら千日苦行の修行僧のような姿をしているのを、度々見かけた。その期間、
「今度は無理、今週で終る」
という時が何回もその男に押し寄せたことだろう。そんな苦行をして
「彼は何を得たのだろう?」
そんなことをして
「無くしたり捨てたものの方が多かったはずだ」
彼が無くした分量だけ、俺や道場生達が多くのものを頂戴した。得ること捨てることがこの世の常ではあるが、その男と俺との関係は、深く思えば「不条理」である。その男は、その修行を一人終えた後、体を壊して数日寝込んだという。すまんことです。その男は、その長き修行中、目標、継続、連続性の大切さを示してくれた。それもやったからといって凄さは見せつけてくれたが、彼には何の得も起こっていない。これからも先もそうかも知れない・・・。
御疲れ様では軽過ぎる。
その男、名を「花岡正明」という。
こんな男が雀鬼会に存在したことだけは事実である。
雀鬼

[写真:080]
雀鬼会本戦の花岡と会長。

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