■2006/03/23(水)
 Vol.76
淋しい話の後は、怒っている話(笑)何、それって、お前さんこそ心の病じゃねぇんですかとお思いでしょうが、怒ってるんだから仕方がない(笑)
下北道場のイベントは二時からだったが、俺はその頃我が家でWBCの日本対キューバ戦を「確認していた」。世界一決定戦という野球の試合には、それほどの興味が最初からなかったが、俺も勝負師のはしくれとして今回のWBCの試合は野球の試合というより勝負師的感覚が動いて、観客も少なかった日本対中国戦を外野で見て目の前で勝負師の練習する姿を、しかと確認した。
今も昔も野球選手はごまんといたが、俺の目で見る限りグラウンドでの勝負師は、王監督とイチロー選手だけ。極論かもしれんが、他の人達はたんなる野球選手。今回だけは老いたる勝負師として、心を御両人に重ねてしまってた。
人の評価は多種多様であろうが、日本の野球界では最強のバッターである王さんは、国籍が台湾ということか、何時だって長嶋さんの下に置かれ、イチロー選手にしても巨人軍や人気を作られた選手の嗅げにあった。そういう評価を作り出す巨大メディアに対して俺は納得がいかんし、不満を持っていた。日本球界も大きくなれば、その舞台裏には、政治経済メディアという巨大な力がうごめくことは、必然だろうが、彼等に対する評価を見落として作り出していた。
王監督には、台湾の王一族の誇り高い血が流れ、家族愛がチーム愛となり、彼に凄まじいグランド上の記録を作り続けていたし、その王監督ですら、同じチームで強大な米国圏のチームと闘うために戻って来たイチローを「筋が通った男」と認めた。王監督は自分の心の中にある言動一致はイチロー選手の中で重なり今の日本選手じゃ、どう転んでも米国圏のチームにゃ勝てまいとする野球界の舞台裏の冷めた動きの中で、真の男の心と心が重なり、互いが信頼を作ったことであろう。
この御両人の目の確かさと、互いの信頼関係がみごとに他の選手達にも伝わり、やっても無駄な状況から、やればどうにかなるに変わり、弱小軍団であったはずの日本チームは世界で一番強い絆で結ばれていった。
親である辛い立場の王監督と貧しいかもしれないが、とにかく明るく、元気よくグランドを走り回ろうとする子供達の選手達が互いに大きな喜びと感動、感激、感謝の三要素を生み世界一の勝利を得た。
米国主導、米国のために作られたWBCが審判の誤審判定や、対戦方式や全てが米国に都合よく作られていた。そういう立場からしても、王監督率いる日本チームは前門の虎、後門に狼のような不遇の中で試合を続けていたのだから、その立場の苦しさを感じた。俺も野球うんぬんというより、王監督とイチローが作ったチームを勝たしたくなる気持ちが強くなっていた。
オリンピック種目からはずされ、日本球界も巨人軍の落日振りの中、立ち上がらねばならなかった王監督と、そのピンチに帰国して来たイチローは、先ず自らのチームを立ち直し、作り上げて行った。
日本で行われた開幕戦の淋しさこそ、今の日本球界の現状を表し、イチローが守るライト側の外野以外は観客もいなかったのだから野球界も、国民も彼等を見捨てた所にあった。だが、弱小軍団が努力と工夫で勝利を重ねていくとテレビの視聴率が50%を越える馬鹿騒ぎになり、日本中がWBCで湧き上がるが、俺は、何を今さら、皆さんやっぱりお馬鹿さんじゃねぇの、と結構冷めた気持ちにさせられていた。
勝負の行方は俺の中では、日本韓国というアジア勢とシロウト最強軍団であるというキューバが勝ち上がることを前回のホームページ上でも書いていたし「我れ悪党なり」の原稿の中でも強く初期の頃から訴えていた。
決勝は、俺の望み通りの日本対キューバ戦となり、これだけで自分の強い勝負気が伝わったようで嬉しくなっていた。その日までどういう訳か俺に眠たさがやって来ず、横にはなっていたが韓国戦の前日以来寝ていなかった。
30年も前にはそういう体験があったが、久し振りの三日だか四日だかの徹夜。家に居ても何時も起きている俺に向かって
「お父さん、外で寝て帰って来るの?」
と問われるが、寝たかねぇもんは仕方がない。それに対して返答する変わりに今日の決勝を見て言う。
「8点」
という数字が見える。
野球批評家とかスポーツ解説者は、2対1くらいのことを皆さんお話しされているけんど、とにかくどっちかのチームが8点を取り、その点を先に取った方が勝つから見ておけと野球を良く知らない俺が前発表してしまう。そして、日本が先に8点を取ったところで俺の中では日本の勝利を確信した。
何んか今回のWBCに限っては、イチローさんが出るという所から俺の心と体が動いてしまって止まらない、寝れない。日本は確かに勝ち、嬉しいのだが、その勝利した瞬間から、その日一日俺は怒りの中に突入してしまっていた。何がどうして俺を怒りの方に押し込んだのか分からないが、俺は怒っていた。
イチローが先頭打者ホームランを打った時より俺の中では米国戦の理不尽の敗北の際、引き上げる選手の中でたった一人ベンチに座り、グランドをにらみつけて立たなかった時のイチローの姿、無念さが強く脳裏に焼きついていた。冷たさや納得いかない状況に置かれても、じっと辛抱を貫いていた王監督の姿もダブる。結果、彼らも最高の感動を受けたが、ここまで来るまでの彼等の屈辱感や無念さの方に俺の心が傾いていたのだろう。
王監督、イチローを始めとしての日本チームに野球を通して何かの真実を教わったような気持である。彼等もWBCが終わればすぐに公式戦がある。それを犠牲にしてまでも、WBC出場選手達全員は、一致団結し、一体感となって闘い、今年の公式戦の優勝以上の野球を見せてくれたのだから、残りの試合は休場にして、毎日温泉でもつかっていても誰も文句は言うまい。
あのイチローが、
「20年間の野球人生で最高のチームだった」
と言わしめたのだから、こんな正しく正直な答えはない。王監督もイチローさんと伴々、いやらしい政治家どもが又、国民栄誉賞とか授けるなんてぬかすんだろうけどそんなものはピシッと受け取らないことを願う。
来年巨人軍に迎えられても、あそこは今や貴方のような立派な男が帰るとこでもない。年俸も低い若い選手たちは、王監督のもと、イチロー先生とともに戦い学べたことは確実に宝のような日々となったことでしょう。
「金が夢」
試合は年俸できまらないということも野球少年には新たに学びとって欲しい。正しいことも美しいこともある。それを求めるのが夢であるのかも知れないことを、学ばなければなんのためにスポーツを売りにしているのかわからなくなってしまう。
勝ち負けの中に正しさを求めた日本チームは今回だけはかっこ良かったな。王監督も背番号が1番。イチローも1番打者。彼等が一番最初に強くあり、正しくあれをやってくれた。
二番煎じを考えているもの、彼等をねたみ、うらやむ業界人の人達、汚いことだからやめとけよ。次はないんだよ。
雀鬼

[写真:076]

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