■2008/02/13(水)
 Vol.702
「雪が降る。貴女は来ない」
今年は都内も何度か雪が降った。この休日を利用して、宮城県の山奥の温泉に連れてってもらう。
夏には海、冬には山奥の雪が似合う。毎年恒例なんだが、今年は20数年の腐れ縁の竹書房の宇佐美殿との二人旅になっていた。
本格的な爺さんと爺さんに、足を一歩踏み入れた二人旅。山奥の温泉場は客室は少ないが、その数の半分ぐらいの数の露天風呂があり、貸切で入れる。
「雪と露天風呂とのんびりがあれば良いよと願っていた。」
雪は思ったより少なかったが、夜半になるとお望みの雪が降り始めた。粉雪が窓辺の木立の中をそろそろと縦に降っている。昼間に見かけたヤマガラやシジュウガラの小鳥達の姿も消える。
そば等で酒好きの宇佐美は地酒を楽しんでいる。下戸の俺は窓辺かベランダに立ってじっと降り注ぐ雪を眺めているだけ。
「雪ゆき、降れ降れ、もっと降れ」
窓辺の外の薄暗いランプに照らされた雪が横に流れ行く。山と木々と風と雪が作る絵図が、厳しくも美しい、横に凄まじい早さで流れる雪が、時折り宙を舞う「龍の舞」を見せてくれる。
宇佐美は酒に酔い、俺は自然が作る美に酔う。朝風呂につかって玄関の軒先の下を見ると、雪に混じった白い固まりを手に取る。
物知り博士の宇佐美が、
「みぞれですかねぇ」
と答えてくれる。
白い固まりは、手のひらの上でも溶けることは無い。みぞれねぇと口の中に入れてみる。しょっぱさの他に何か異様な味がして、二人してすぐに吐き出す。何気なく後で宿の方に訪ねたら、宇佐美博士がおっしゃるみぞれとやらは、なにやら雪解けの薬品だった。
みぞれはなんだが、たった二日間、12時前に寝て、朝起きるという生活が出来ただけでも御の字でした。
雀鬼

[写真:702]

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