■2007/03/19(月)
 Vol.436
深夜近くまで皆して手を掛け遊んでやった幼子の孫が、「マぁマ」「マぁマ」と、つぶやき始める。
ママの存在の音に敏感な幼子は、ママの存在の音を身近に感じながら少しずつ育って来ていた。
幼子にとっての生命の源は、母親の「存在と音」と「接点」。母親と幼子の作り上げたその領域には、幼子の父親も俺達家族の音や接点での愛ではうずまらない。「ママとこ い〜く」「ママとこ い〜く」と、寂しげと悲しみで泣き続ける。
泣き疲れて幼子が眠る。その寝顔をそうっとうかがう。幼子の愛しい寝顔に不覚にも鬼の目にも涙。俺にも母親がおった。俺も四人の子供の親であったが、幼子が求める母親の愛と比べれば手も足も出ない。60年も前に俺が母親に求めたものとどこが違うんだろう。違うことなんてあるもんかい。俺だって同じ母親を求めた幼子だった。五日間は毎夜そんな夜がやって来る。
幼子よ、決してその涙をうすめずに泣き声を上げて欲しい。弱虫の涙じゃ決してない、幼子が大切にしている涙だから、うすめたり、失うのはずーと後になってからでいいんだよ。
幼子がこの世に生を受けてから一年数ヶ月、母親はいつも幼子の身近な存在であった。幼子は感じている。今、その母親が新しいもう一つの生命のそばにいることを。
幼子よ、母親の音を探してうんと泣きなさい。その体感も五日も経てば元に戻り、いずれ忘れよう。
だがねぇ、幼子が60年後には、後からやって来る生命で思い出すからね。
きっとだよ。
雀鬼

[写真:436]

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