■2006/02/14(火)
 Vol.41
朝、四時半起床。辺りはまだ、薄暗い。誰も寝坊することなく、車に乗り出発。徐々に夜が明けてくる。一昨日、東京で冬の真っ盛りに居たことが、もう思い出せない。完全に夏の夜明けだ。
二十分ほど車に乗り空港に着く。ここからは、セスナに乗り、移動する。機内は五人乗りで、軽自動車より狭い。離陸して暫くすると、右から日が昇り、左から月が沈む。雲の上で体感する夜明けは、とても幻想的だ。
[写真:041-0]
二時間ほどして、目的地に着くと今度は更に二時間、車で移動。途中に見える町並みでは、下級階層の人達の生活が見える。ゴミの山を漁る子どもたちもいた。
暫く走ると舗装道路が完全になくなり、砂利道になる。こうなると、遠出というより、もう完全に旅行だ。やがて、見えてくる海。ジンベエ鮫の書かれた看板がそこらここらに見え、目的地に着いたことが分かった。
時間は九時。ジンベエは水温が上がるお昼頃には、プランクトンを追って深いところへ行ってしまうらしい。午前中が勝負だ。
カヌーのようなボート二台に分かれ、海に出る。いつ、ジンベエに出会っても良いように、すぐにシュノーケルを付けて、準備。五人のガイドたちが、目を凝らして四方の海を見る。
[写真:041-1]
風がやたら気持ちいい。いやが上にも期待は高まる。
[写真:041a]
一時間ほど、その辺りの海域を走り回った。いまだにジンベエの姿は見えない。辺りには十隻近い船が出ているが、どの船もジンベエを見つけた様子はない。昨日現地で降った雨により、水の透明度が悪く見つけにくいらしい。空がちょっと雲って雨がぱらつき始め、僕らの気持ちにも若干の暗雲が立ちこめ始めた頃、会長が言った。
「どこがジンベエ鮫の交差点なんだよ、安田」
「今日は道路工事中なんですよ、会長」

そう言いながら、自分でも笑えない冗談だなと思った。
時計がお昼を示す頃には、完全に出逢え無い感じが漂う。会長も船の上で横になっている。向こうの船では、今回の旅の企画者の繁が、完全に折れているだろう。
一時を過ぎたので、陸に戻る。今、戻らないと帰りのセスナに乗り遅れてしまう。港に向かう船、誰も口を開かない。船のキャプテンが、アイム・ソーリーと言い、僕は、ノープロブレムと、しかたなく答えた。
結局、今回の目的だったジンベエには出逢えなかった。一行に長旅の疲れがどっと出る。ピーチで昼飯を食べたが、完全に折れた繁は、一口も食べず黙っていた。
再び、車とセスナを乗り継いで、来た道を帰る。終わった…。完全に終わった…。無駄ヅモで流局。ラストーーーー!!という冗談を思いついたが、今言うと、この場で車から降ろされそうなので、黙っていた。
長旅の末、ホテルに戻り、シャワーをあびて海辺のレストランで待ち合わせ。もう今回はジンベエに逢えないんだなと、レストランへの道を歩きながら、ふと海に目をやった。
「!!!!!!!!!!!!」
夜の海辺になんか見える!?再び目を凝らす!なんて事だ!瞬間、込み上げてくる涙を抑えきれない。涙に曇った眼で、再び見る。間違いない!ジンベエ!ジンベエだ!こんなところでジンベエに逢えるなんて!僕は大声で叫んだ。
「か、会長ーーーー!!!」
[写真:041b]
「ん?なあに?」
コレかい。こんな落ちかい。こんなに大変な思いをしてやって来て、こんなベタベタな落ちかい。
雀鬼流に大切なのは、修正力。トラブルを楽しめ。楽しみを作り出せ。僕らは日々そう教わっている。夜の食事の後、僕らの意識は「どう残りの日々を楽しむか」に変わっていた。前に気持ちを向け、ちゃんと今と向き合えば、ジンベエに逢えなかった意味も、いずれ自然と分かると思う。
海辺のレストランの帰り道。忘れられない、この日の思い出に僕らはジンベエ姿の会長と記念写真を撮った。
安田潤司
[写真:041c]

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