■2006/11/12(日)
 Vol.307
俺が月に二度の割合で通う床屋がある。
店内禁煙ということで合間を見つけちゃ、ベランダに出てタバコに火をつける。一人、二人と手の空いた女性スタッフが、ベランダの俺の側に来る。
どちらからともなく一声三声、声を掛ける。女性スタッフの目からは何時しか涙が落ちる。
国元離れ、親御の手を離れ、都会の床屋さんでの修業の日々を送る。淋しいのか辛いのか悩みもあるのか、俺の来るのを待っているように涙する。その床屋にとっては何年来の客の立場の俺に向かってそれぞれの涙が落ちる。
床屋にしちゃ、スタッフも多い。それなりの店構えや栄えた店内の中にも、淋しさや悲しみや悩みがある若者がいる。それぞれがそれぞれの頑張りを見せて、必死に作業をしても他の客の前で見せる笑顔は俺の前では、堰を切ったように涙する。
彼等もそうやって何時しか涙すら忘れる大人に育っていくのだろう。
雀鬼

[写真:307]

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