■2006/07/11(火)
 Vol.188
[写真:188]
雀鬼流の十八年。生れた子供が高校生になる位の時間。その十八年目の締めを飾った選抜の決勝戦。
七月九日 午後五時半…。
決勝戦開始前に語られた桜井会長のお話は、その場にいる者の心に直接響く、まさに言霊でした。
ここにその全文を掲載します。
全員がピリッとしてるね。選手もそうだけど、審判も…。それは今日が終わるまで、消えないと思う。
まあ、多田が弱った時に私に電話してきまして、「雀鬼会は神聖なものじゃないんですか?」と言った。まあ、普段の中でお笑いも随分ありますけどね。
今日は神聖じゃないですか。こういう瞬間がある。毎日、神聖を追うということはイカサマです。楽しくお笑いがあって…それが人生だ……ね。
でも、神聖な瞬間ってのがある。これは地球でもそう。地球上どこへ行ってもゴミだらけ。でも、神聖な場所ってのはある。昔で言えば、神が宿るところみたいなもんだ。神社だとか、あるいは神木だとかいまだに奉られてる所がある。
私も海外に行ったり、日本を旅してて、ふっとそれを感じる時があります。それはあくまで、自然界にしか残ってない。京都だとか、あんなところへ行っても、それを感じません。それは人間が入り込んで、汚してしまったからでしょうね。人間がそれほど近づかなかった時には、そういうものがあったんでしょう…。
雀鬼会ね…十八年ですけども…私は最初から走ってきました…安田もそう…多田もそう…。並びにそれに準ずる者もいます。特に今日の選手…金村、村瀬、志村、橋本。十数年、雀鬼流を本当に愛してきたね。麻雀を愛してんじゃないよ、雀鬼流というものを愛してきた。それは間違い無い。
一年、二年、ぼーっと来てみんな楽しそうだな、ここへ来ると救われるな、ここに来るといいことあるな…そんな連中とは、訳が違う。
今まで困難とか辛い事、乗り越えなきゃいけないこと…
いっぱいあった。
すんなり行くのは当たり前じゃねえ、色々あるから雀鬼会っていう教え方があった…。
本当に色々あったんだ…。
それをいつでも、厳しいときでも、楽しい時でも、やって来た人間が…
今ここにいるわけだ。
今日は、点数うんぬんなんてどうでもいいんだ。
そういう人間が選ばれている…。
今期は、特に俺は…あんまり…どうしようかな?もう雀鬼会止めちゃおうかな…って、そういう時期から始まったんですけど…
終わってみたら、やっぱりお前等に負けてた…俺が。確実に負けてました。お前等は勝ったんだ。こういう形を創ったということは、お前等が勝ちですよ。
また、俺が負けてしまった…。
雀鬼は強い男だ、無敗の男だなんて言いながら、お前等に負けてしまうことが、ざらにあるわけですよ。まあ、そういう形で今日を迎えたんですけど。
宮沢賢治じゃねえけど、雨にも負けず、風にも負けずじゃねえけども、本当に長い間、我々は風の中、雨の中、そういう中でやってきた人間たちが、今ここにいるんだよ。
それが大きな意味を現してると思う……。
雀鬼会を好きな人は…雀鬼流を好き人は、地方にもいっぱいいると思う。それは、俺の本の上だとか、あるいは、自分が弱ってるとか迷ってるとか、そういう面で頼ったり、それを参考にしたりとか、そういうのがあるかもしれない。
でも、頼ったり、救われようとして、我々に注目するのは…
お前等が創って来たものだ。俺が創った事じゃない…。
そういうものが、雀鬼会の歴史だよ。
麻雀の試合じゃねえよ、今日は。
プロの連盟とか、色んな大きな大会もあるかもしれない。あれは、ただの麻雀の試合だよ。うちら、麻雀の試合じゃない。
生き様の試合だ…。
みんなそれぞれやって来たんだ…。それは確実に分かっている。分かってるからこそ、安田も俺も…今回の決勝戦の意味というものを感じているわけだ。
それも…三年や五年じゃ出来なかった。やっぱり、終わりに近づいてきて、こういう姿が見えたのかな…。そういう気がする…。
我々は君らが…世間が常識という中で生きてるよね。まあ、そこも非常識なんだけどね。
そこは狂ってるわけだ。
間違った方向へ頑張ってるわけだ、みんなね。我々は、間違った方向なら、頑張るなって言う。正しい方向…それをみんなで声を掛け合って、やってきたんだ。
まあ、そういう意味でも、本当に意味がある。俺はもっと意味を探してるよ。多分、ここにいる人たちの中で一番、今日ここにある意味というものを、昨日の時点で感じ取っている部分もあるんだ。
それは一年生や二年生では感じられないよ。あるいは十年生でも感じられないかもしれない事があるんだ。
見えないこと…
そういうものがある…。そういう壁がある。すんなり行かない壁があるんだよ。
そういう中に、君らは置かれている。
それを乗り越えなきゃ駄目だ…。
全員は乗り越えられない。一人二人しか乗り越えらない…こん中から…。これだけやって来た人間でも、乗り越えられないよ。
そういう壁がある…。
それを与えられてしまうのも、運命だよ。いいことばっか与えられるのが運命じゃない。必ず落とし穴が置いてあるんだよ。
だから、面白れぇ!
それが、後で分かると思う…。
我々は、数を追ったわけじゃないね。数の競争なんて、クソくらえだ。そんな卑しい、恥ずかしいことはしたかねえ。それは後で付いてくるもんであって、先に求めるもんじゃねえ。
それはみんな知ってる。君ら全部知ってるよな…。上に立つ人間は、特にそういう事を知ってる。
いかに内容良く打つか…。今回においても、点数はここに出てますけど、これ以上に大切なのは、俺の評価点。金村と村瀬は30ポイント取ってますけど、大きな意味がある。
勝ち負けじゃない。いわゆる雀鬼会イズム、あるいは基本動作とか、いかに相手に迷惑をかけないか、打ち切れるか…あるいは、弱ったものを救ってあげられるか…。
選抜でもね、弱った人間と打つわけじゃん。それをてめえ勝手に、てめえだけ打てりゃいいなんてとんでもない。打てないものを、どうにか救ってあげたら…
それこそ本当の…雀鬼会選手だ…。
それをできる人間もいるしね。まだまだ、自分一人しかできない人間もいる。あるいは、自分の事もできない人間だって、選抜の中にもまだいるわけだ。まあ、そんな中から十六名集まってきたわけだ。
非常に…
運命と言うか、因果というか、アヤと言うか…
本当にそういうものが、流れているんだよ。
ただ、単なる試合じゃないんだよ。それはもう、みんな分かってると思うけど…。
思いっきりぶつかるんだよ。
思いっきりぶつかって、真っ正面からぶつかって、良かろうが悪かろうが、どういう答えが出るか、
見てみようじゃねえか!
策略を練ったりとか、そういう事はしない!戦略だとか、そんな事は考えるな!
ぶつかるだけだよ…。
ぶつかって、ぶつかって、
答えを見りゃあいい…。
それがありのままの姿だよ。
道場の中には、負もある…プラスもある。プラスの人間がいるという事は、マイナスの人間がいるのは当たり前だよ。特に雀鬼会となれば、世間からマイナスの人間が集まってくる。
それはドロップアウトという事じゃないよ。普通の雀荘はドロップアウトした人間が集まってきますけど、雀鬼会はそうじゃない。東大生だとかも、そういうのもいっぱいいますけどね。
マイナスというのは、心の病だよ。人の為になれないという事だよ。そういう人間がいっぱい集まってきてるわけだ。そういう奴らの方が多分多いでしょう。それに染まらないようにして、それをどうにか修繕したり、修理したりしなきゃいけなかったのが…
ここにいるお前等だよ…。
修理工だよ、お前等は…。
それを確実にやって来たわけですからね。まあ、そういう意味で大きな意味があるなぁ、と…俺自身もそう思うよ。
それが分からねえ奴は、感性があるとは言えない。心があるとは言えない。
鈍感だろうし、世の中に負けた人間で世の中の情報だとか、常識だとか、価値観に負けてる人間だよ。
そんなもんには、俺は絶対に頭を下げねえ!
どんな政治家だろうが、どんな企業家だろうが、
俺は絶対に頭を下げねえ!
テルちゃんのように小さな靴屋、ああいう方に俺は頭を下げる。
それはお前等も同じ事だよ…。道場でそういう事をやってきてる。
それが卑しくない人間の価値観…美意識って奴だよ。
そういうものをみんな学んで来ただろうし、そういうとこを分かってる人間が多いと思う。
それが雀鬼会じゃねえか!
それが雀鬼流だって…。
たった一つかも知れない、世の中でね。もちろん麻雀の中では、絶対にここしかない。半端者の麻雀界になんて、あるわけがないよね。でも、他の企業だとか、宗教だとか、色んなものの中にもそんなものねえよ。
大体、人間を神にするなんてことは、一番の罪だよ…ねえ…。
俺は鬼じゃねえか……鬼の教えだよ。お前等には、鬼の教えをしてきたんだ。
人間が神になるなんて一番の冒涜だよ。何を冒涜しているかっていうと、我々に一番恵みを与えている自然を冒涜しているんだよ。何びとも神になってはいけないんだよ……ね。
宗教、クソくらえだよ、そういう意味では。
我々は宗教の集まりじゃない。そういう事を全部ひっくるめて…
雀鬼流っていうのが、あったんだ…。
まあ、どっかに俺の世の中に対する怒り、あるいはその嘘っぱち、体制の嘘っぱち…情報のね…。新聞だとか、大きな情報は嘘が多すぎる。正直だなぁ、って感じるのはBBCぐらいのもんだよ。なぜかっていうと、あそこはマスコミ魂を持ってるから。朝日新聞、NHKなんて、どこにあるんだってんだ。
それぞれが…やっばり…麻雀打つなら、麻雀魂…多分俺は、麻雀魂を持ってたんでしょう。花屋なら花屋の魂…それでいいじゃない。
その魂を失った時には、必ず卑しいもので頑張ってるよ。
頑張りゃあ、正解じゃねえからな!
ヤクザもんだって頑張ってんだ!体張って、命張って、刑務所入ったって頑張ってんだ!そんな仕事やってる奴は、いくらでもいるよ!
でも、我々はそうじゃなかった…。もちろん、君たちだって一歩外へ出ればそういう人間たちに会わなきゃなんない、染まらなきゃなんなかったでしょう。
俺の場合はラッキーな事にね、みなさんとこういう場で、そういうもの抜きにして付き合えることが多かったですから。
凄げえ…一番嬉しいのは俺だと思いますよ。
これを他の仕事だとか、他の人間関係作ってれば多分、こういうことは無かった…。
俺も君らよりまだ若い時、たった一晩で億という金を稼いだ。
ちゃんちゃら、おかしいね!
ちゃんちゃら、おかしい…
そういう経験を二十年やってましたけど、ちゃんちゃら、おかしい…。
そんなもん、全部捨てちゃいました。そんなもんはとても、認めることはできなかった。そういう人間たちに早く知り合いましたからね…俺の場合。逆に、そうはなるまいって思ってやってきて、
気付いたら雀鬼会に…
君らと知り合った…。
それで今、こういう風な十八年の歴史がある。
それは、全然違う…。
何が良いか悪いかなんて、分からねえよ、今の世の中は。
本当に分からない…。
でも、この間の下のクラス…Jr2、それから多田と樋口の…Jrの試合。
俺はあそこには、正義を見たよ。
正義だったよ。
樋口は今まで正義を知らなかった…。親に裏切られ、全てを奪われ、正義なんか世の中にねえや、って思ってた。
でも、あったんだよ!
自分で掴んだんだよ!
それをお前と多田が創ったんだ…。もちろん、廻りの魂がお前に入ってたんだ。めったにない事が起こった。
勝ちには正義は無えんだけどね…。
勝ちなんかに正義は無えんだ!
戦争で勝った国が正義じゃねえんだ!
企業で勝った所が、大国が正義じゃねえんだ!
でも、正義は…
たまに…
麻雀を通して…
そうやって起こった…。
それはやっぱりお前等が創ったもんだし、お前等がやってきた事で、俺にはそういうものが見えました…。それには、俺は非常に感動しましたよ。
まあ、そういう事を全部ひっくるめて、まだまだ意味は多く…俺も昨日からもずーっと色んな事を考えました。あるいは、今日の事がホームページに発表されてから、色んな事を考えましたよ。
世の中には、サッカーとか野球とか色んな闘いもあるでしょうけど…雀鬼会の闘いとはどうして違うんだろう?と…。そういう意味をずーっと考えた…
…足跡を辿って…。
何かが見つかったような気がします…。
まだまだ、そういうものがいくつもある。すんなり行かねえかもしんないけど…
…まあ……
やるしかないね……。
今日は暑いですけどね…頑張って…ぶつかっちゃってください…。
それしかない…。
四人が四人ともぶつかればいい。
心でぶつかんなさい、心で。
みんな心がある人間だもん。他の人に比べれば、数段心のあるお前等だ。
心のぶつかりあいをしていくだけだ。
[写真:188a]

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