■2006/06/08(木)
≪ Vol.154
昨夜、丑三つ時ちょいと前だというのに町田道場に二匹の妖怪が現われた。
一応、悪寒を感じていたので、入口にお札を貼って置く。現世に住む妖怪とはまともに闘ったら勝ち目がない。妖怪の悪業に俺は立ち向かえても、他の道場生ではたちまち飲み込まれるか喰い殺されてしまう。
人間に近いカッコをして現われる妖怪は常人には見分けることができないが、雀鬼ともなれば、天候の変り目同様に妖怪が忍び入る違和感を前もって肌で感じ取れる。
妖怪が姿を現す前に手の平に呪文を書いておく。
俺が愛する仲間を守るためには、それなりの準備をしておかなければ道場生達に多大な被害者が出る。
道場生たちには普通の人間に見える妖怪が、二人して現われたが俺の目は誤魔化せない。彼等の妖怪特有のちょっとした仕草や呼吸の放出に悪気を感じ取れる。少しでもこっちが妖怪に気を取られたり、油断や隙を見せたら彼等の領域に一気に持って行かれてしまう。
「K」と「Y」と呼ばれる彼らは、人間の世界では40歳そこそこに見えるが、彼等の悪業振りは、室町時代から続いている事は分かっている。
見るものが見れば「K」と「Y」の人相、様相にも悪業の相がはっきりと見て取れるが、一般の人が、それを読み取ることはとても不可能である。しかし、彼等の存在はUFOの存在より現実なのだ。
「K」と「Y」という妖怪を相手にするには我々は踊るか歌うしか、残された手段は無い。鎧や太鼓があればもっと良いのだが、致し方ない。俺と道場生は深夜だというのに歌い舞った。妖怪「K」と「Y」は、なす術が無く精氣を失って、そそくさと深夜の街へ姿を消した。
人を喰って生きる「K」と「Y」という妖怪ももう二度と道場には現われないだろう。
我々は全員の無事を祝って午後の紅茶で乾杯した…。
雀鬼
[写真:154]
妖怪「K」と「Y」
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