■2006/02/23(木)
≪ Vol.48
我々が泊まったその島のヒルトンホテルは、テロで破壊されたツインタワー並みに天高く人工的に作られていた。ホテルだから人工的であることは分かっちゃいる。が、そうではない。アメリカ資本で作られているそのホテルは全てが人工的なのである。一応、ホテルは海に面して建っており、プライベートビーチがあるのだが、その海ですら高い城壁に囲まれ、ちょっとしたプールほどしか海岸が無い。どこから毎日運んで来るのか、その海岸だけが白砂で、城壁の外側は一般用の海なのか、砂地も黒く海の色も汚染されている。
オーシャンビューのベランダから眺めると、プライベートビーチだけがスッポットライトを当てられた狭い領域に見える。城壁の外の海は、とてもリゾート客が入れる海ではなく、プライベートビーチは箱庭に作られた水辺のようでこちらもとても入る気にも、そばに行きたい気持ちにもなれない。
自然に逢いに来たのに、そこいは少しも美しい自然が無い。白人資本の作ったホテルなのに、ゲストの姿に白人の姿が見当たらない。ゲストは、日本人か韓国人系ばかり。江ノ島より10倍汚い海になんか、白人達は近づいてはいけないことを知っている。
「白人達にとっては、そこはビジネスの場であっても決してリゾートの場ではないことを利口な彼らは知っている。」
宿泊客を守るというか、アメリカ資本を守るため、ホテルは2重ガードになっていて現地の人を寄せ付けない。我々もヒルトン城からオンボロ車で出掛け帰る折にはその2重のガードの入り口でチェックされる。自由と平和どころか危険に対する厳しいガードである。車の中も、我々の手荷物もその度に火薬犬に息をかがれる。ガードされているのか、犯罪者扱いなのか、両方とれる。
その国、その島の人々は、とうの昔しに他国の宗教が入り込んでいて、クリスチャンが大半。町並みの家にはキリストやマリアさんの絵が飾られていた。その国には少数のイスラム過激派が棲んでいる。そのための厳重なチェックを行う。
その国がとうの昔から宗教、政治、経済、文明、文化すらアメリカ化されていることは、俺でも知っていた。戦後、どう転んだってアメリカの力の元で日本社会は子分化されているが、この国はもっとひどい。都合の良いことだけをアメリカ化されほとんどの人々は放ったらかされたまんま。それこそ資本主義、市場主義、個人主義の持つドロップアウトの姿が見て取れる。
あるアフリカの言葉で、「何時のまにか、手の中に聖書を持たされたが、気づくと自分達の土地も全てを失った。」
という言葉を思い出す。
翌日のジンベイザメとの対面を控えて我々は人工的なビーチを捨てて、船をチャーターして少し沖に出る。その船のオーナは日本人で、自ら現地のスタッフ5人と伴に船に乗ってガイド役を勤めていた。ポイントに船を止めて潜ってみる。珊瑚は、見えないか死んでいて一時間ほど潜っても小指ほどの魚が数匹いるだけ。この海は汚れている。死んでいる。日本のきれいな水を飲んでいる我々には海水すら下痢を起こしそう。
船着場では、現地の大人や子供達が素手で米だけの食事をして海水で食器を洗い、親子そろってその後入浴したり、トイレ代わりにしていた。現地の人にとっては水辺は生活全ての一部なのだ。
我々が、船着場からチャーターボートに乗るまで、小さいハシケで三往復かかる。
[写真:048b]
その間、暑い日差しをまともに受けながら真っ裸の子供達が水辺で遊ぶ姿をながめ、日本から持ってきた紅茶のボトルを一口のどに通すやそれを見た七〜八人の子供達が裸でやって来て手をのばす。紅茶を差し出す。もらわないという態度を取る子が2人いた。彼等も物を"乞わない"というプライドを教えられているらしいが瞬間、背の一番大きい子が、俺の手からうばうように紅茶を持って走り逃げると、まわりの子等も一団となって一本のペットボトルを追う。
「分け合うことをしないのか」
その姿を見てガイドが、彼等には「ありがとう」と「ごめんなさい」がないという。
裁判制度が発達した米国では、自分の否を認めたら負ける。その前に相手の否を攻撃することが勝つという。個人主義とはそういうものなのだろうか。
素直と勇気のTシャツを着た我々はそういう社会的環境に違和感を感じる。彼等にも昔し昔しには彼等なりの掟の中に、正しいプライドが存在したはず。そこへ悪い要素が海外から文明、文化として入り込んでへんてこりんなプライドになってしまっている。
使命感や責任感などを学ばない彼等の習慣はアバウトである。そんな彼等でも日曜日にはクリスチャンのお勤めで教会に行き、神様には感謝をし、金をもうけた、食物を頂いた、ありがとう神様という。
その人達の暮らしの全ては自然の恵みか、まわりの人々からの協力で何かを頂いているのだから、神の前に、互いの人間関係の中に「ありがとう」があるのが必然である。人に何かをしてもらっても、その人に直接「ありがとう」を言わずに、日曜日に教会へ行ってまとめて神様に「ありがとう」というのもおかしな話である。
学校を出たハイレベルな人の中にも、キリストはアメリカ人だと思っているという話には、笑ってしまったが、全てが含まれているような気がした。その船のオーナのガイドさんの話によると、この船も現地の人達に頼んで製造したが、作っているうちにどんどん船体が重くなって、日本から取り寄せたエンジンではとても早く動くことが出来ない。その上、船を止めて置くと、エンジンを含めいろいろな物が盗まれてしまうので、今は現地の人が2人寝泊りしているという。
何もない島。自然の姿すら失いかけてる南の海を船はよたよたしながら走っていた。
雀鬼
[写真:048c]沖縄の海で亀と戯れる雀鬼
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