■2006/02/04(土)
≪ Vol.29
今日は第31期雀鬼会の表彰式、ならびにミーティングの日です。通常、町田道場が開かれるのは、午後一時からなのに誰もいない道場に、朝から何度も何度も電話を入れる。子供だった頃の自分が外で遊び、腹を減らし、母親の作ってくれる温かい手作り弁当の料理を今か今かと待つような感じに似ている。人の持つ感情は状況によって変わる。
こんな気持ちにさせたのは、安田に決まってる。
昨夜、思い出したんだけど、昔、下北道場の主だった大人達が集団で一度に何人も抜けて行ったことがあった。彼等も雀鬼会の初期から時代や歴史を創ってきた中心的な存在だったから一週間ぐらいは、寂しさや空しさ、己の力不足など色々なマイナス感情が俺の心を締めつけていた。
彼等は、誰もが三道楽を捨てきれない大人の遊び人でその彼等に対して壁を作っていた安田がいた。俺のすぐ下にそういう種族の大人たちがいたから俺と安田の間にもワンクッションも2クッションもある。二つも三つもの壁で遠ざけられた位置の人間関係であった。
その後、ある年の夏の海で遊ぶ安田とその取り巻き数人がゴムボートを出して、沖に向っていく姿を見て彼等の背中に寂しさを感じた。
俺は安田と朝まで心を割って色々な話をしたことを覚えている。その時は俺の自意識が、安田のためよ、と思って、奴の変化を望んでいた。
その日、その時から確実に安田はひっくり返ったような変わり目を見せいくつもの壁を乗り越え俺と真正面から向き合う日々が多くなった。
あれほど個性の強い奴だった安田はそれまでは一部分の者達だけとの触れ合いはあったが、嫌われ者、何かに逆らう反抗的な人物で、素直なんてクソ食らえ!みたいな生き様をしていた。
そんな安田がある日、仲違いをしていた父親に久しぶりに会って話をした。
「お前、変わったな。うん、いい人と出逢ったんだな」
と、おっしゃっられたと嬉しそうに話をした。それを聞いて俺も腹の中で
「良かったなー、俺のお陰で少しでも気付いてなー」
と、人助けをしたような気分で浮かれていた。が、今思えばそれは俺の思い過ごしだった。
あの時、俺の周りにいた者達が去った寂しさの中に誰かが安田を送ってくれたか、俺を助けに、なぐさめにやってきてくれたんだ。そんなことを昨晩やっと気付くのだから、俺も大したことはねえ。思い込みもいいとこだ、と反省した。
一昨年の全国大会の前日。社会というか業界、麻雀界に対して理不尽、不条理が積もりに積もって大爆発の怒りを感じ、自分の中でそれを抑えられずにいた。
「もう、嫌だ。全国大会なんかやめちまえ!」
と、ピリピリした時を送っていた。
道場生達は、全国から集う人々に対して少しでも、良い気持ち、温かい気持ちになって頂き、それをお土産に差し上げることが我々の使命感。その一日を一年に一度の楽しみとして北海道や沖縄などの遠方から、遠い仲間達が寝ずにやってくる
そんな大切な日の前日、てめえの不甲斐なさか、心に最高の怒りがやって来てしまったのだから誠に始末が悪い。
「今日の会長は危ない」
という空気は道場生達にも伝わり、誰も俺と目を合わせられない。言葉も無い。近づけば喰われる。俺も誰かを喰い殺すような勢いだった。
黙ったまま道場を出る。黙ったまま安田がついて来る。電車に乗る。若造達が座席を占領している。黙って蹴散らす。小僧共は散る。サーっと空いた席に座る。その日の俺は、人喰い人種だった。
その晩は一睡もせずに、翌朝会場に入る。が、俺の怒りは収まっちゃいなかった。試合が始まり、会場内を夢中で走り回る。安田も走っている。朝から夕刻まで走り廻り打ち上げの席へ。そこでも安田は体を張って盛り上げ会場全体を笑いの渦に巻き込む。何時しか俺も安田の作った楽しみの中にいた。この時も安田が大ピンチを救ってくれていたのだ。
そして今期31期、安田の優勝が俺の気持ちを救ってくれた。俺の周りにも多種多様な問題が起き、このまま倒れちゃった方が楽じゃないかと、思うほどの困難が重なったが、その上で皆してやりくりをし、やってきた。本戦がショッパくて、全てに自信を失いそうな中、最高の形を安田が創ってくれた。
過去を振返ると、大げさかもしれないがもしかしたら安田は俺にとって神、いや、そこまでは行かぬともピンチの時に救いにやってくるターザンかスーパーマンの様な気分にさせられた。
人様に感謝心を持って過している事も事実なんだが、何かに、
「お前の人生なんか、全て周りの人のお蔭なんだよ」
っと、教えられるような思いだった。
遠く過ぎ去った日々、安田は屑だった。人にたかるダニやシラミだという男に俺は何度救われて来たんだろう。ダニやシラミが人を助けるなんて話なんか聞いた事もねえ(笑)だも、それも現実、事実、本音だ。文句あるか、安田。
雀鬼なんて強がっているようで正直なところ小っこいダニやシラミに助けられて来たんだよなー…。
決勝が終わった打ち上げ、高槻の山田と町田支部の志村がまさに自分の事のように喜び、いつもあそこまでは酔いつぶれない山田が壊れるほど喜んでいた。
大自然が演出する厳しさと美しさの変化と同様の厳しい道を伴に歩んでくれた者達が酔いしれていた。俺と安田だけが静に何かを噛みしめていた。
山田の気持ちの中には十年間も雀鬼会で闘い、一度も優勝することなく終えた自分と安田を重ねてみた嬉しさであったに違いない。いい、仲間だよなー、朝まで飲んじゃってさあー。俺の年の事も少しは考えろってなぁ…。
あくる日嬉しくて、木津ちゃんに入れた。もう、雀鬼効果は失せたけど今期は完全に「木津エネルギー」だったことを伝える。めったにрキることもない木津君の会社に声を聞きたくて電話した時も村瀬と清川がお世話になっていた。彼等もその後、下の方から上がって来て準優勝と三位になったんだから不思議な御縁もあったもんです。
下北じゃ玄米一族とかあるらしいけど俺はまだ入んないよ。
だから、俺、弱いのかなー…。
雀鬼
[写真:2-5]
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